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2013.3.14投稿記事②

妊娠と鉄

鉄は人間に必須の微量ミネラルであり、血液中のヘモグロビンの主原料であり、筋繊維のミオグロビンにも必要であり、コラーゲンの合成にも不可欠な、非常に重要な元素です。
人間にとって非常に重要な鉄はまた、他の生物にとっても生存に必要なミネラルでもあります。

鉄は細菌の生存と増殖にも必要なために、生体から鉄を奪おうとします。
生体は細菌に鉄を渡すまいとラクトフェリンを出し、細菌もまた、鉄を奪おうとシデロフォアを出す。
鉄を巡って、日々人間と細菌との仁義なき戦いが繰り広げられているわけですね。

そんな非常に重要な元素である鉄は、生体にとっては非常に吸収が難しい栄養素でもあります。
様々な食材に鉄は含まれていますが、一日10~15mg鉄を摂取したとして、生体に取り込むことができるのはわずか1mg程度といわれています。
それに対し、汗や尿や便で失われる鉄もまた、1日につき1mg程といわれています。

これだけ吸収が難しい鉄ですが、日本人女性の一日平均摂取量は7~8mgといわれており、鉄の摂取不足が懸念されています。
さらに、有経の女性は月経で鉄を失うので、さらに鉄の喪失量が多くなります。
女性では一般的に、毎日の鉄の喪失量+月経での鉄の喪失量が約30mgで、月に60mgの鉄を喪失するといわれています。
一日平均では2mgという事になりますね。
そうであるなら、女性は毎日の食事から、鉄を2mgは摂る必要があるのです。

一日10~15mgの鉄を食事からとっても吸収されるのはたった1mg程度。
更に女性は月経がある。
このことから、女性に貧血が多いことが良く分かると思います。

このように生体にとって非常に重要である鉄は、また非常に摂取が難しい物でもあります。
ですので、生体には鉄を貯蔵するシステムが備わっています。
鉄は通常、赤血球中のヘモグロビンとして存在していますが、他にも組織鉄(ミオグロビンやコラーゲンなど)、血清鉄(ヘモグロビン以外の血液中の鉄)、そして貯蔵鉄として生体に存在しています。

貯蔵鉄は、小腸で鉄が吸収される際、フェリチンという形で小腸に貯蔵されます。
そして、生体で鉄が必要になった時に、血液に乗せて必要な場所へと送るのです。
このフェリチンは、一般的な保険適応の血液検査や健康診断での血液検査などでは測定しませんが、生体内の鉄の貯蔵量をはかる重要な指標です。
妊娠前の女性であれば、このフェリチンの値が少なくとも100ng/ml以上は欲しいところです。

女性は妊娠すると、胎児の成長・発育のために特別な栄養を必要とします。
とはいうものの、妊娠の初期にはつわりがあったりして、なかなか思うように栄養摂取が出来ないものです
ですから、妊娠前の栄養状態の改善が非常に重要となりますが、特に鉄は吸収が難しく、十分な鉄の貯蔵をするのは非常に困難です。
妊娠してから十分に鉄を摂ろうとしても、遅いのです。
ですから、現住民族の多くは妊娠前の6か月に特別の栄養摂取を義務付けているのです。

妊娠すると、母体は胎児に優先的に鉄を送ります。
母体の鉄が足りない場合は、母体の赤血球を犠牲にしてまで胎児に鉄を送ります。
ですから、妊娠中に貧血になる人は、非常に重篤な鉄欠乏なのです。
そうやって母体の鉄をどんどん胎児に与えるから、母体は貧血になり、つわりはひどくなります。
母体の血液量+胎盤に回す血液量が必要なので、母体の血液量は増え、さらに心臓にも負担がかかります。
血液中のヘモグロビンが不足するだけでなく、組織鉄も不足するため皮膚はガサガサになり、うつなどの神経症状が現れます。
血管のコラーゲン合成が上手くいかなくなるため、下肢に静脈瘤が現れたりすることがあれば、それは鉄欠乏が相当に深刻であるという事です。

さらに鉄が足りなくなり、これ以上母体が鉄を胎児に回せなくなると、胎児は母体から鉄をもらうことをあきらめ、自力で摂取しようとします。
すなわち、切迫早産ですね。
これは、鉄が足りないから生まれてくるしかないという状況に、胎児が追い込まれた証拠なのです。
だから、薬で無理やり早産を抑えることはやってはいけません。
妊娠前の鉄の十分な摂取が必要なことが、これでお分かりいただけたでしょうか。

そうなると、妊娠前に鉄を十分摂取しようと思うでしょうが、いったいどれくらい摂ればいいのでしょうか。
それは、貯蔵鉄を増加させるのに十分な量の目安として、一日3mgが推奨されています。
さらに、定期的なフェリチンの測定を行い、100ng/ml以上になれば、安心して妊娠しても良いといえるでしょう。

女性が慢性的な鉄不足になると、妊娠しづらくなります。
女性が不妊になるのは、妊娠できないのではなくて、栄養が十分に足りていないから、“妊娠してはいけない”という、体からの合図なのです。









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